人間は遺伝的に、AIロボットはプログラムされている基礎人格と行動プログラムによってある程度の下地はあるものの、人は皆生まれてから暫くの間は「赤ん坊の時間」であり、その間にどのような情報を得たかによってその後の性格が決まる。
 心あるロボットの情報源は人間との交流、又は与えられる情報である為、必然的に概念は人間に酷使する事になる。
 ただ、今回解説の対象となるブレイブポリス達の「一族」には女性がいない。ましてや、本当に男の人格を持っているかどうかも定かではない。
 【BP-110型デッカード】は偶然デザインが男性的フォルムで、それを見た友永勇太が「男」として見たので、デッカードは自分を男と思い込んでいる。
 彼らの超AI精神構造の根本的な部分は外部からのアクセス+書き換えが困難もしくは不可能なので、自身が男であるという概念、任務に対する心得などは起動後の教育によって確立された。
 今の所、BPナンバーズ達は全員が男だと認識してはいるが、場合によっては本質は女性である可能性がある。というよりも、確定した性別概念を植え付けずに誕生したブレイブポリスは、概念と本質が男か、または本質は女だが概念は男
(医学的には性同一障害)という中性な性質を持っているかの何れだろう。

 例題として二人のBPナンバーを挙げる。
 特異的構造上、同一のAIを持つ【BP-500x型カゲロウ】とその後継機【BP-501型シャドウ丸】だ。彼らの行動を見る以上、兄弟・友ではすまされない感情がある。
 カゲロウが記憶=シャドウ丸を失いたくないという感情は、単に自身の抹消だけでなく、相手に対する固有の感情が強く見られる。そしてシャドウ丸の感情表現には子供の精神構造が見え、人間の五歳未満の子供に見られる現象と酷使する部分がある。
 大人には「予見能力」という物が存在する。
 予見能力とは物事が起こらないうちに、物事がどう結果をもたらすか見通して知る事。「動乱を予見する」「叱られるので嘘をつく」「本当は嫌だが相手が機嫌を損ねるので調子をあわす」等に使う思考である。
 初期のシャドウ丸には記憶の抹消に対する結果への想像が欠落していた。


 普通『ロボット』等の製品を作る上での機密保持という点では必要外の人物接触は避けている。
 だが、対象が『心ある』存在であるならば、人格形成という面において影響は免れない。大抵のBPナンバーズ達は精神の完成後、つまり人格という存在が確立した段階で人間との接触が始まり人格が作られる。
 しかし、シャドウ丸は隠密回路と任務性により、精神誕生後の『特殊教育』がなされた。その内容は作品中で述べられているのであえて説明は省くが、シャドウ丸はその間『心ある者』としての接触が無い。
 『心ある者としての接触が無い』という点では【BP-型119デューク】も似たような点を自身で挙げているが、彼はそう思っているだけで、実際には生みの親、レジーナ・アルジーンへのマザーコンプレックス
(デュークはレジーナを「母」と認識し、母親に対し「純粋に喜んでもらいたい」という幼児の基本的行動原理に基き、一見して論理的かつロボットの人格を否定するような行動を取っていた)で他開発者と交流はある。
 シャドウ丸は徹底した管理下の元、感情の高揚を押さえ第三者の視点で物事を判断するように教育された。
 しかし、心ある者全てに負の感情という歪があるように、シャドウ丸もまた精神面に不安定要素が存在する。大抵の人間はこれを『理性』という感情で押さえ込むが、シャドウ丸は恐らく、隠密刑事としての教育と精神の成長が合わず、見かけはともかく精神の本質が子供のまま大人になってしまった状態の為と思われる。
 シャドウ丸は言わば、映画などの題材としてよく使われる『無菌室で育てられた子供』だ。近い話では【スターウォーズ・クローンの攻撃】の、惑星カミーラで育てられた大量の戦闘用クローン人間達。自制心=心を排除して育て…いや生産されいている。
 その様な環境で育てられては、理論なとの『ロボット』としてのシャドウ丸ならば良い結果をもたらすが、『心ある者』としては不安定な存在となる。
 自分で考え、行動するというBPナンバー最大の利点を殺す結果となる為、シャドウ丸誕生時には精神教育の為の特殊プログラムを作成する必要性が早々に検討された。
 それが、シャドウ丸の教育係りとして、彼の時間形成に多大なる影響を与えた、【BP-500x型カゲロウ】である。
 カゲロウはシャドウ丸の教育係りである他に、新開発であった隠密回路を搭載したロボットのテスト機体であり、彼のデータを元により完成した機体としてシャドウ丸が作られた。
 二人の使用武器も、鎖鎌と忍者刀と違うのは、情報の絶対帰還を目的としたBP-500シリーズの存在理由に乗っ取った戦闘訓練において、異なる戦闘時の対処法としてのプログラムの一環だ。

 その様な理由から、シャドウ丸のブレイブポリス配属までの外部接触はカゲロウ一人に限定されていた。
 シャドウ丸はカゲロウを基本として彼のデータと新たなデータを融合して生まれた存在、【黄金勇者ゴルドラン】の【黄金剣士ドラン】が妻マリアのデータを融合して生まれたドランジュニアと同じ…れっきとした親子なのである。
 ドラン達の子、ドランジュニアの場合、ドランはボディ構造を、精神に関してはマリアのデータに強く影響されているので、マリアを母・ドランを父と認識している。シャドウ丸の場合、父とは新たに付け加えられたデータ
(試作機からの変更部分)であり、母とは自分の肉体と精神のプロトタイプ(隠密機能等の基本OS)であるカゲロウと第三者からは考えられる。

 たとえ、カゲロウは自分が親だと認識しなくとも、自身から生み出されたシャドウ丸に特別な感情を持つのは必然。
 シャドウ丸がカゲロウを慕うのは、生命体が母親に対する『純粋に愛している』という感情
(赤子は母に一番なつくと言われている。これは、子供が母親の胎内にいた頃に感じた暖かさと身近さ、生まれる前の記憶を覚えているからである。父親が好きというのは、『この人は危害を加えないから安心する』といった感情でしか無い)
 カゲロウは精神面においてはシャドウ丸ほど抑圧されず、訓練にいたっては純粋にプログラムのとおり行っていた。この時期に確立された彼の人格構成で、デッカードは受け入れた人格消去をカゲロウは拒んだ。
 これは彼がデッカードよりも『心』という精神についての接触面があったからだが、一言で言って、カゲロウのブレイブポリス脱走は一種の

『育児ノイローゼ』

 だ。
 ただのロボットとしての人格消去なら受け入れたが、彼は子供=シャドウ丸の事が心配で心配で心配で心配で心配で心配で、心ある存在として人様の前に出すには何しでかすか心配で。
 人間で例えるなら、ある名家に嫁ぎ跡取り息子を産んだまでは良いものの、『子供が生まれた
(もしくは成長した)からお前は不要だ』といわれた母親が自分の居場所が無くなりどん底に落ちると言った状況そのものだ。
 生みの親という認識を持ち、愛しく、手放したくないと願うこれらの条件を全て持つのは女性に見られる精神構造であり、そのような精神構造を持つカゲロウは本質的には女に近く、その性質をダイレクトに受け継いだシャドウ丸もまた女である可能性が立つ。
 少なくとも、性別に関してが只の憶測であるとしても、二人が『親子』である事は、理論的に見ても紛れも無い事実である。


 しかし、人格形成において制御された教育を続けたシャドウ丸にとって『カゲロウ』という存在は肉体とAIであって、AIに宿る心では無い。シャドウ丸は「カゲロウ」という存在にのみ好意と認識をもっていた為、カゲロウが『心』の為に逃げるという理由が理解できなかった。
 結果としてシャドウ丸はカゲロウの心を理解した。そして、理解する事によってシャドウ丸は成長するものの精神に傷を負いある程度の障害を持ったと思われる。



 以上、例題を終了するが、これで行けば、AIロボットのモデルであるデッカードは母と言えよう。
 母(卵子=全ての基礎)フォルツォイクロン。そこに父(精子=誕生のきっかけ)となる友永勇太が出会い、結果としてデッカードが生まれた。
 そのデッカードから更に生まれたAIロボットは、デッカードの子供と見てもおかしくはない。

『関連図』
 母(卵子=基礎データ)=フォルツォイクロン(超AI)
 父(精子=誕生のきっかけ)=友永勇太
 子(↑の結果)=デッカード
 孫(子から生まれた)=マクレーン以下AIロボット(一部除く)

 デッカードの子の一人であるカゲロウ。
 カゲロウのAIからシャドウ丸・チーフテンT・チーフテンUが生まれ、チーフテンを分析し量産型チーフテンが生まれた。
 という事は、シャドウ丸・チーフテンT・チーフテンUはカゲロウの子で、量産型チーフテンはカゲロウの孫となる。

 孫=カゲロウ
 曾孫=シャドウ丸・チーフテンT・チーフテンU
 曾孫の子供=量産型チーフテン


 彼らに対する仲間同士としての連帯感は、大部分が「親近感」であると見て良い。