◆ 第一回秋葉原防衛線を経て、それまで常識だった事柄が次々と塗り替えられる。 今まで訪れなかった《過疎エリア》に多くのバーストリンカーが足を運び、停滞していたポイント流通が活発化する事で失われた活気を取り戻すきっかけとなった《クリプト・コズミック・サーカス》による貧困問題の解決案。それは《秋葉原特区》含む一部台東区エリアの非戦闘区域化。 早い話が、加速世界初の商工業宣言だった。 戦う事が大前提だった世界。紆余曲折を経て《クリプト・コズミック・サーカス》は台東区を、低レベルでも安心して狩りが出来る、ペナルティを気にせず安心して売買を行える商業地帯を現実の物にした。 「それがバーストリンカーのする事か」と激怒する者もいない事はなかったが、今では《秋葉原特区》は通常対戦フィールドとは正反対の、無制限中立フィールドにおける《非対戦の聖地》として有名になっていた。 《オープニング・カーニバル》から暫く後、あるバーストリンカーが秋葉原へと訪れる。 バーストリンカーの日常生活。誰とは言わない、良い越しの金は持たないよーな主義の人にとって理解出来ないだろうけど、加速世界だって日常生活ってあるんだよ。 釣り糸垂れて魚を釣ったら焼いたり燻製にしたりしてピクニック。石釜を作ってパンを焼こう、火事には気を付けるんだぞv 《領土戦》が終わったら打ちあげだー♪美味しいご飯を持ち寄って、飲んで騒いでおつかれさま。 大事な話ですが、この本はBLです。BLを書いている筈なんです。 なのに何故か一向にラブロマンスが始まりません。
津田さん当時小六か中一ですけど間違い無く違いますよね! 頑張れ女性陣、男どもは頼らん方が賢明だ!
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あらすじ 今、《中央エリア》ではとあるブームが起きていた。 バーストリンカーによる『手料理』。ショップの統一化された味付けでは無く、加速とかアビリティとはまったく無縁な力を使い、如何に美味しい料理を作れるかどうか。 それまで閑古鳥だった食材系ショップは連日客が訪れるが、同時に重大な事実が発覚する。 「何が……ぜぇ…あった……の?」 煤だらけの体を近くの水辺で腰まで浸かる。 そんなバーストリンカーが辺り一面。ブルー・ナイトが捕まえたのはコバルト・ブレードだった。 「…うちの馬鹿が大変ご迷惑を」 水に浸かりながら土下座をして謝る器用な人。 「いや君の所為じゃないって。ていうか、マーガは何処?」 「あそこです」 振向いて視線を促すコバルト・ブレード。 美味しく焼けました 「…うわお」 「飛び散った着火剤をまともに食らって、慌てて手放したそれが近場の鍋に飛んで引火して、連鎖して。責任感のある人ですから、率先して消火にあたりました。結果一番被害が……」 ぷかー 顔半分だけを水面から出して浮かび、流れるマンガン・ブレード。 フッ素加工のフライパンを堅い素材の器具や清掃道具で擦ってダメにした者あり、目玉焼きを作るのに大量のバターを投入して別の料理にした者あり、米を洗うのに洗剤を入れる者あり多数。鍋が噴き零れるなんて可愛い話、とにかく、とにかくまともに料理が出来ない事が白日の元に晒され続ける。 みんな、火の取り扱いは注意しようね。 |
▼サンプル 第四幕 「いやー、何これーー!」 薄紫の肌に彩る、透明な液体。紫の装甲に纏わりついて隙間に潜り込む。ヴェールの髪は動く度に液体が糸を引き、粘着質の滴りが髪留めになった。 「ははは、離すなコバルト、うわぁ!」 「マ、マンガン、重いー!」 ツインテールが液体の海に浮かぶ。横向きになった平面の多い甲冑はあまり絡む事が無いが、その分地面と平行になった場所では表面張力の法則に従い球体となった。 足が滑って覆いかぶさる。ポニーテールが押し倒した相手の顔に掛かって液体が頬に落ちる。何とか起き上がろうともがくが手を付き足で踏ん張る地面が滑って上手くいかない。滴り、貯まり、密接する体の間で液体が音を立てる度に粘つきが増す。 「くそう!これは何だ!」 半透明である分、黒い体は余計に目立った。液体に僅かに割り振られた色彩が、その部分だけを強調して体を覆う。顔・耳・首・胸・腰・足。絶妙な照り輝きが昼間なのに夜のスポットライトに照らされたが如く煌めく。 《絶対切断属性》の恩恵たるホバークラフトで何とか立ち上がれはしたものの、自分達を『攻撃』して来るエネミーを何故か倒おす事が出来ない。 正確には、切る片っぱしから再結合してしまうのだ。 ……… エネミーに咆哮は無い。擬音で説明するなら ぬるぬる ぬたぬた まあそんなあたり。 |
▼サンプル 第五幕 「丘ーを降りていこーおよー、くさーぶえーふきふーきー♪」 新宿区から中央本線に乗る。ログイン過密時刻、秋葉原へ行くバーストリンカーが何人も乗り、一定数が居ると現れる車内販売NPCが弁当を売りに来た。 秋葉原駅構内には人待ちのパーティーが椅子に座るなり、軽食ショップで打ち合わせなどをしている。 まるでリアル。《変遷》とデュエルアバターをスルーすれば、自分がログインしたのはブレインバーストではなくVRゲームでは無いのかと錯覚する。 人が降りる車内。だがしかし、彼らはそのまま列車に残り、上野駅まで乗って行った。 「お前も良く飽きないな」 上野着の通常列車を降りる前から思っていた事を口にする。 「間違ってないさ。だって今日の行き先上野だもん」 人が居ない訳ではないが秋葉原駅と比較して閑散とするホーム。駅員NPCにチケットを渡して改札を降りた。 本日の天気は《妖精郷》。《原生林》の大自然と《月光》の神秘さを足して割って【ロマンチック街道】を放り込んだ様なステージ。地図片手にブルー・ナイトとレッド・ライダーは周辺の地理を確認した。 「僕達は新しい狩り場探して上野周辺を探索しに来たんだぜ。その帰り道にたまたま秋葉原があるだけで、目当てはこっちだもんね!」 「おめー、そのヘリクツ流行りか?」 白磁で出来た駅から出て一番に見た光景は、何処までも続く森林だった。【上野恩賜公園】は元々広大な寺の敷地であり、文字通りの森林地帯だったらしい。今でこそ歴史の流れから自然の残る公園として整備されているが、《妖精郷》では公園としてのテイストを残しつつ、森林地帯としての面影を再現しているのではないかと、レッド・ライダーは感想を述べる。 新しい土地、見慣れぬ光景、初対面のエネミー。自分の知らない場所へ足を踏み入れた時の高揚感は恐怖心・好奇心が複雑に絡み合う。武器に手を添え何時でも使える様に、景色を眺めオブジェクトの美しさに見とれながら二人、公園で一夜を明かす。 二日目、天気はそのまま。二人は近くのダンジョンを軽く探索した後に外を歩いて行くと、巨大な水辺が姿を現した。 「すっげぇーー!」 一体何キロあるのか、見渡すだけでは解らない遊歩道に囲まれた池。中央には神殿を思わせる建造物が聳える小島が浮かび、そこから三方に伸かって伸びる小道により池は幾つかのブロックに分けられ、それぞれの場所に生える花は全て異なる。 木々に囲まれた各場所の水面は風に吹かれる度に花びらが揺れ、色取りの色彩を作りながら空へ舞い散っていた。 「過疎エリアにこんな名所があるなんて…」 「【不忍池】は二十三区で一番名のある池だからな。それが、こんな風景になってるとは」 一番近い道を通り小島に着いた。おごそかな神殿の道筋は大理石の彫刻があしらわれ、通路となる石畳は何千年もの時間を刻みこんだ風格が踏みしめただけでも感じられる。 それらの全てには苔と蔦が生い茂り、歴史の衰退と繁栄を静かに見守り続けていた。 「…僕達、今までもったいない事してたみたい」 「だな」 ブルー・ナイトとレッド・ライダーが感嘆の声を洩らす。 暫く神殿の中を探索していた時だった。小鳥の鳴き声と風の音に紛れてぱしゃり、ぱしゃと水音がする。噴水オブジェクトとしては不規則な音に、何だろうと二人は顔を見合わせ発信源を目指した。 小島の直ぐ脇にある僅かな浅瀬。そこに、明らかに人の手で作った物があった。 三本の木で出来た四角錐が三つ水面から出ている。頂点からは紐が垂れ下がり、湖面に沈む台座の上で置かれる袋と繋がっていた。 「何だろこれ?」 「さあ」 並んで岸辺にしゃがみ人工物を見る。 ぱしゃり また音がする。 二人は同じタイミングと同じ動作で首を向けた。 「……」 黄色い花が水の上で咲いている。そんな幻覚が一瞬見えた。風に吹かれる花びらと木の葉が目の前に過り、それが花では無いとようやく頭が理解する。 膨らみのあるバルーンの肩。それと同調する幅しかないベストの背中は燕尾服の様に伸びて目の様な模様が描かれ、ビロードの向こうで二本の角が揺れている。 長身であるが為、それなりの深さまで浸かっていてもせいぜい腰まで。長い腕が水の中に沈み、時折体を屈めて水面を見つめていた。 |