◆主人公をサンダールに置いた彼の過去にまつわるストーリー ジャカンジャとして、暗黒七本槍として存在するまでに何があったのか。現代に通じる設定なり地名なりが登場する以外は、ほぼサンダールとタウ・ザントしか出てきません。こうなればオリジナルに近い サンダールの魅力を文章で引き出したつもりです 世にも珍しい鮫の総受け、今回は序章で本番はまだ… 売れる気は無いけど愛はあるっ あらすじ 今を遡る事昔、ジャカンジャが銀河数ある裏家業の一勢力だった頃。タウ・ザントの元へ一つの知らせが舞い込んだ。それは、【アレ】を探す為銀河へ散らした一人の中忍からの口頭によって伝えられる。タウ・ザントただ一人にその内容を伝え終えると、彼は静かに目を閉じた。 「そなた達に命を与える…」 重く、低く響く声に、召集された暗黒伍虎星(当時の上忍衆)アーレスとユーピテルは主の命を受け止める。 弐の星アーレス。その傍らには、後に七の槍と呼ばれる若者の姿があった。 |
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▼サンプル 「あ?」 持ち上げたそれは軽い。 「おい、追加だ」 男は手近の中忍へ追加を催促し、中忍はかしこまりました、と 手の皿を抱えなおして厨房へと飛んでいく。 「お待たせいたしました」 来るまで雑談をしていた二人の後方から声がして、カウンターに酒が置かれた。 「ああ、すまな…」 燗を取ろうと視界に移った手に思わず硬直する。 蒼色と灰色銀の籠手、その間から覗く、特徴的な網目模様の麻黒の肌。 目線をあげれば、そこには。 「サンダール?」 「ご注文の品は、こちらで宜しいですか?」 銀のトレイを持っていた。隣のユーピテルは先に気付いていたらしく、幾等か冷静を取り戻しているが、流石に唖然。 「お下げいたします」 空いた皿とボトルを、随分と慣れた手つきで置いた銚子の代わりに手に取る。そのまま一礼し、店の奥へと消えて行った。 「…何しに来たんだ、アイツは」 「さぁ」 |
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▼サンプル 「いい気になるなよこの若造っ」 軌跡がまた翻る。サンダールは、避けようとしない。 その場にいた誰もが抜き身の刃が頭上に落ちるであろうと予想する。しかしそれは、僅か拳一つで止まった。 鈍い紫銀の光沢を放つ扇が、それを受け止めていたのだ。 磨鑛(まこう)月の姿をした先端が、刃を受け止め、離さない。交わったまま、ぎらりと鋭い光を放ち、互いに一歩も動かない、動けない。 サンダールは笑った。力点をずらし、相手の剣を一瞬だけ前に進ませると扇の月に滑らせて、後ろへ飛び去った。 よく見れば、見事な扇であった。背の刀同様、鎧と同図案を考慮し作られた灰色銀の華奢細工。振り上げれば優雅に、振り下ろせば鋭く、逆立つ刃先が飾りとも、小刀とも見える、不思議な扇だった。 誰かが床を蹴った。勢いに乗せて拳を振り上げ、顔に狙いを定める。 拳の動きに、僅かに微笑。すり足で右に避けると、扇を外側目掛けて二の腕に叩きつけ、隙の開いた男目掛け、足払いをかけると、しゃんと背を伸ばし、扇の手を水平に持ち、前のめりになる額に鋭く一閃した。 ぱしん、と一音。次いで武器の乱舞が踊り出る。手近な酒瓶から己の刀まで、獲物を手に中忍が襲い掛かる。ただどれも、振り下ろすその瞬間に、サンダールの姿が軌道からそれた場所へ、あるいは通り過ぎた場所に現れて、扇の先が喉を掠める。 誰も触れることができなかった。捕らえようと伸ばした手は虚しく反れ、背を屈み、翻り、或いは飛び跳ね捕まらない。 逃れる度に漆黒の外套(オーバーズボン)が翻り、右の眼帯が照明の光に照らされて、あでやかに、煌びやかに舞い踊る。 |
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▼サンプル 「らしく無いよなぁ。ま、そんだけ寛大なんだろうよ。見た事ないけど」 「タウザント様は、人前には御出にはなられませぬて」 空いた瓶をテーブルの隅に追いやると、瞳が笑いの形に歪む。 「大型昆虫系てのは辛いよなぁ。世間の尺が常識と違うんじゃ」 「小よりは良いかと」 「カルガンのアレかぁ。限度があるだろ」 ギアは懐から火石を取り出し、煙管の雁首(がんくび)に火をつけた。 「火を頂けますか?」 サンダールが一言。 「あんたも吸うのか?」 ふう、と煙を吐き、サンダールにマッチを差し出した。 「煙草は好みませぬが、香草(薬草のたばこ)は好きです」 マッチを摩り、自前の香草に火をつける。若々しいミントが口内に充満する様を楽しみながら乾物の豆をかじった。 |